映画「戦場のメリークリスマス」見ました。

映画戦場のメリー・クリスマス

先日、初めて「戦場のメリークリスマス」を見ました。

名作と言われているのは知っていたのだけど、戦争モノは苦手だし暗そうだしで、あえて避けてました。
あまり名作の誉れ高いと、却って避けてしまう気持ちも有り。

しかしとうとう見ました。見ましたよ!

あ、あれ、これってそういうテーマの映画なんだ…!?

もっと捕虜問題とかどうせ日本兵の残忍行為だとか反戦映画とか、そういうゴリッゴリの戦争映画かと思っていましたが全く違いました。
そんなありがちなものではなかった!
な、なんだこれ…!戸惑いを隠せない!!

こういう、登場人物の考えをはっきりと描かずに見手が想像するしか無い映画は、見る側のそれまでの経験や考えや理想や願望に左右されて、その人だけの解釈が構成される(多いか少ないかはあると思う)ので、私の「戦場のメリー・クリスマス」の解釈は小首を傾げるモノかもしれません。
でも良いの!そう見えたの!

まず冒頭からのOPエピソードからして、「……え?」となりました。

ハラ軍曹(ビートたけし)「カネモト(日本兵・男)が捕虜(オランダ人・男)の牢屋に入ってオカマを掘ったので、金本は切腹の刑!」(意訳)

……え??

ゴリッゴリの戦争映画が始まると思って見ていたこちらの戸惑いが伝わりますでしょうかーブラジルの人ー!?
この戸惑いから映画は始まりましたが、ラストは涙涙でした。

映画では、3組の関係性が描かれてます。

1.ハラ軍曹とローレンス
2.カネモトとデ・ヨン
3.ヨノイ大尉とセリアズ


1.ハラ軍曹とローレンス
ハラ軍曹は17歳の時から従軍しています。言葉より先に拳が飛んじゃう粗暴さではあるが、お経が読める。思考に意外な柔軟性があり、西洋的な考えを「理解できない」と言いつつ否定はしません。
ローレンスは日本語が出来るので、捕虜ですが通訳もしています。日本的な思考も理解しようとしています。話し方が優しい英国紳士。ハラ軍曹には当初から好意的。捕虜というより友人として接している気配があります。
収容所に居た時には、日本兵と捕虜という立場的な壁が有り、両人が行動を共にする事が多くてもハラは日本兵という立場を貫いていましたが、一度だけ、処刑が決まっていたローレンスとセリアズを助けます。その時に言ったセリフが「メリークリスマス、ローレンス」です。
それを受けてのラスト、ハラの「メリークリスマス、Mr.ローレンス」という言葉は、収容所では一切その素振りを見せなかったハラからの「立場が違ったあの頃から既に、本当は自分たちは友達だった」というローレンスへのメッセージだったと解釈しています。
全てを覚悟した中で、それをローレンスに伝えられていなかった事だけが唯一の心残りだったのでしょう。短い間だけですが、漸く対等な立場に立てた2人なのでした。ラストのビートたけしの満面の笑顔、屈指の名シーンです。
思い出しただけで泣けます。

2.カネモトとデ・ヨン
冒頭で全俺をポカーンとさせた「カネモトによるデ・ヨン強姦事件」ですが、カネモトが処刑されるとデ・ヨンは泣き叫んでその場で舌を噛み切って自殺します。
実は相思相愛だったのでした(ここでもポカーン)
言われてみれば、カネモトがデ・ヨンを強姦したという事件も、セリフを聞いてみれば行為最中を見つかっただけで無理矢理部分を見られた訳ではなさそうです。
かといって、2人が告白し合って愛を確かめ合って行為に及んだ…というのもちょっと考え辛い。
というのも、冒頭でハラに「皆の前でもう一度こいつのオカマ掘ってみろ!」と侮辱されたカネモトが「やってやる!」とやりかけた事です。大事な恋人にそんな態度は取らないでしょう。
さらにデ・ヨンも、「カネモトは怪我を治療してくれた。とても親切だった…」と言うのみ。後に相思相愛であったことが判るので、ここで「こいつに強姦されたんだ!」と言わないのは理解できるのですが、逆に「自分たちは愛し合っている」とも言わない。カネモトをかばおうとしない。不思議です。
以上から推測するに、この2人、想いはあったもののお互い口に出す事無く「その場の流れでそうなった」可能性が高い。
そうなら、当人2人が一番大混乱していたでしょう。もともとノーマルである事はデ・ヨンも言っています。そしてふたりとも軍人です。
「ノーマルだけど優しくしてくれた・庇護対象だった男に惹かれて思わず関係を持ってしまった」より、「無理矢理強姦した・された」の方が対面が保てるとマッチョに考えるのは不思議じゃない。2人が恋人ではないのなら。自分が男を好きになった事自体も自分で受け入れられてない可能性があります。
それなら、カネモトが責任をデ・ヨンに擦り付ける事もせず一切口をつぐんで自分が強姦したとしていた事も、デ・ヨンがカネモトをかばわず、なのに毎夜悪夢にうなされるのも、最後の最後で後追い自殺をしてしまうのも辻褄が合います。
両片思いをこじらせた末の悲しい事件です。OMG。

3.ヨノイ大尉とセリアズ
敵といえど自分より階級が高い相手には礼をし、部下には気遣いを見せ、常に公正であろうとし、自分を律し、鍛錬を怠らず、英語はペラペラ、部下も憧れる上司ナンバーワンの軍人オブ軍人ヨノイ大尉。
そんなヨノイ大尉が、軍事裁判所でゼリアズに一目惚れをしちゃった事から収容所はテンヤワンヤの大混乱☆
ただ一つ問題は、どう見てもヨノイ大尉、自分の恋心に全く気付いてません。
というのも、もしヨノイ大尉が自分の恋心を自覚していたのなら、あの無私の男が、これだけあからさまにセリアズを特別扱いしないと思われます。
毎晩様子を見に行ったり、寝床に毛布を引かせたり、反抗的な態度も咎めず――ヨノイ的には、セリアズに軍人として惹かれ、セリアズを立派な軍人として認めているから、軍人として敬意を払い、収容所の捕虜長となって日本軍に協力して欲しいだけであると信じているに違いない。
わかっているのは周囲だけです。
だから、ヨノイ大尉に憧れる部下が「大尉の心を乱すセリアズめ!」とセリアズを暗殺しようとし、失敗して割腹自殺をしても、ヨノイ自身はポカーン。
男色は規律違反であるため、迷いなくカネモトの処刑を決め、捕虜達にも分からせる為に(デ・ヨンが捕虜内で標的になる可能性の抑制?)処刑に立ち会わせます。
軍の規律は絶対なので、「男色=ダメ・絶対」に全く疑問がありません。そして自分が規律を破るなんて考えも付きません。
だから幾らモヤモヤイライラしても、自分がセリアズに惹かれているというアンサーに辿り着かない!

やっと自分の気持ちに気付いたのは、セリアズに抱擁されキスされた時でした。
その時、漸くヨノイは自分の狂乱の意味を知ります。
ショックで気絶します。

セリアズへの優遇が、自分の恋心から出た事であると知ったその後のヨノイは、再び無私の男に戻ります。
所長職を退き、セリアズに関わることを辞めます。
セリアズに関わることは私情であり、軍の統治に私情を挟むことは悪だからです。
セリアズに処刑命令が出ても、今までの様に反対しません。私情が入っているからです。

それでもセリアズの処刑が終了する寸前、たった一度だけ、ヨノイは夜遅くに彼を訪れます。
セリアズの髪を一房切り取り、彼に敬礼をし、声をかけること無く、その場を立ち去ります。
それはヨノイが恋心を自覚してからの、セリアズヘの最初で最後の行動でした。
ヨノイほどの軍人が、最後の最後で、どうしても想い人の一欠片が欲しかった。
ヨノイほどの軍人の、あまりに身勝手なセリアズへの愛の告白に震えます。
自分が死んだら、彼の髪を自分の故郷の神社に奉納して欲しいと言い残しますし、本来なら母国の家族の元に返すだろうに、そんな事はヨノイは思いも付かないのでした。
どこまでも融通の利かない、悲しいほどに真っ直ぐな男、軍人ヨノイなのでした。

セリアズに対しては、正直良くわかりません。
彼の中には弟への贖罪しかなく、弟を恐れるのと同じくらい、弟を想っています。
優秀な軍人ですが、その優秀さ勇敢さは「弟と対峙することへの逃げ」から発生しています。
弟は絶対に自分を許してくれないと思っているから、弟から逃げるために、いくらでも勇敢になります。
自分と弟の問題で心が荒んでいるので、全てを斜めに見ています。
自分のことで手一杯なので、収容所の日本軍もヨノイの事も、あまり理解する気はありません。
しかし、自分を想って狂乱するヨノイを見て、彼を抱擁します。
自分のその心の変化に、弟も自分を許してくれると確信できたのだと思います。
だから彼は、幸せな夢の内に死んでいったのでしょう。
それにしても、裁判所で脱ぎ出すセリアズ、そりゃヨノイも一発KOです!
デビット・ボウイこわい!!


こんな感じの3組のドタバタ(ドタバタ…)がジャワの日本軍捕虜収容所で繰り広げられます。
とにかく、単なる戦争ものだと思ってたらビックリだった「戦メリ」でした。
銃ババババーン!とか爆発ドカーンドカーン!!とかは一切なし。流血あっても切腹くらい。
見た後、一日くらいずっとこの映画について考えてしまいました。
子どもの時に見たんじゃ、切腹こわいくらいにしか思わなかっただろうな…大人になって良かったです。


戦場のメリークリスマス [DVD]
内容(「キネマ旬報社」データベースより)
大島渚監督、デヴィッド・ボウイ、ビートたけし、坂本龍一ら豪華キャスト共演による戦争ドラマ。太平洋戦争下の42年、ジャワ奥地の日本軍捕虜収容所を舞台に、軍士官や捕虜たちが織り成す複雑なドラマを中心に、西欧と日本の文化的衝突を描く。

 



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